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根上さんとのセッション その1

《第一部》

 僕には、根上隆さんという師がいる。根上さんは、僕の一億倍すごい人だ。

 以前、仕事で滞在していたマレーシアから一時帰国した際、10年来会っていない根上さん(もちろん連絡先などわからない)がどうしているかと思い、根上さんの名前を試しにネットで検索してみた。

 すると、ある人権派弁護士のページに彼の名前がヒットした。

 記事を読んで、そこに登場する人間が彼に間違いないと確信した僕は、その弁護士の先生に連絡して根上さんにコントクトをとってもらうことにした。

 さっそく根上さんから連絡が入った。

 「目白で会おう」そう言われて目白で会った僕たちは、そのまま彼の運転するワゴン車で埼玉の岩槻にある彼の自宅へと向かった。

 途中、池袋のあたりで彼が急に車を止め、走って降りていった。

 車内から見ていると、根上さんはヤクザ風の男たち3人の間に入って一生懸命何かを話している。

 同じく車内にいた弁護士の先生が、「彼はあれをやるんだよなぁ」と少しぼやいている。

 根上さんは彼らに名刺のようなものを渡して、車に戻ってきた。

 「何をやってたんですか?」と聞くと、「あれは二人に一人がからまれて困ってたんだ。見なかったのか?」そういってまた車を走らせた。

 数日後、僕は彼の家に泊まった。翌日の「春風」というイベントに彼を連れ出すためだ。

 10年前は僕はまだ子供だった。でもそのあと海外に住み、パーティのシーンを追いかけ、ドラッグも体験した。彼のクレイジーにも十分ついていけると思った。

 彼は、春風には行っても受け入れられないからと行くのを渋っていた。

 でも僕は、なかば無理やりに彼を連れ出し、会場である代々木公園に向かった。

 会場へ向かう途中、目白のあたりで雲行きがあやしくなった。

 根上さんの執拗なからみに僕がキレたのだ。

 目白駅近くの住宅街に車を止め、言い合っているうちに僕が大声を出した。

 それを聞いて誰かが通報したのだろう。

 場所を変えるために車を発進させ、目白駅前の信号で信号待ちをしていると、誰かが窓ガラスをノックした。

 警官だ。

 運転している僕の脇には、さっきまで僕が飲んでいたビールの缶がある。

 チラリと根上さんを見ると、根上さんが僕に言った。

 「運転代わるか?」

 「はい。」

 僕たちは窓の外にいる警官を横目に席を入れ替わった。

 「おい、お前たち、何やってるんだ。早く窓を開けなさい!」

 返事をするどころか、いきなり席を入れ替わり始めた僕たちを見て、警官がさらに激しく窓を叩いた。

 根上さんは、後ろのシートからタオルを取り、それを僕に投げて言った。

 「のぶ、それで顔を隠せ。」

 そうして自分はやはり後ろのシートからフルフェイスのヘルメットを取り、それをゆっくりとかぶった。

 「おい、お前たち!いい加減にしないと..」

 警官がそう言うや否や、信号が青に変わり、そのとたんに根上さんは車を急発進させた。

 「止まれ!!」

 自転車に乗った別の警官が、僕たちの車の前に立ちはだかり制止させようとした。

 「どけーーーー!!!」

 根上さんの凄まじい怒号とクラクションに、警官は自転車から飛びのいた。

 「ガッシャーーーーーン!!!」

 警官の乗っていた自転車をはねて引きずったまま、僕たちの車は目白通りを爆走、まもなく自転車は後方へ消えていった。

 車線も信号も無視して爆走を続ける根上さんが僕に言った。

 「のぶ、お前今日帰れないけどいいか?」

 突然の予想せぬ展開に完全にびびっていた僕は「はい」としか言うことができなかった。

 それから、少し先の首都高のガード下に根上さんは車を止めた。

 「これから私服がやってくるぞ。」

 その言葉通り、私服の刑事らしき人物が僕たちの車のまわりをうろうろし始めた。

 そして何分もたたないうちに、僕たちは十数台のパトカーと何十人という警官たちにあっという間に包囲された。

 「おい、窓を開けなさい。」

 刑事が窓を叩いた。

 今まで体験したことのない状況に頭が真っ白になっていた僕は、すでに投降モードだ。

 大人しく言うことを聞きましょうよと言おうとしたそのとき、根上さんの怒号が響いた。

 「この車にはなあ、プラスチック爆弾が仕掛けてあるんだっ!開けたら爆発するぞ!それでもいいのかーー!!」

 (もうやめてー)

 「いいから、早く開けなさい!」

 「じゃあ、開けてやるよ!!」

 そう言って、根上さんがキーを回したその瞬間、運転席と助手席と両方の窓ガラスがぶち破られ、割れた窓から外に引きずり出された僕たちは、車のボンネットに何回も頭を打ち付けられたあげく「公務執行妨害で逮捕だ!」と後ろ手に手錠をかけられた。

 そのまま僕たちは目白署に連行された。

(つづく)
by tenpapa2013 | 2015-11-09 17:54 | 根上 隆 | Comments(0)