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根上さんとのセッション その4

《第二部》

 僕の家族は、根上さんに関係して僕が姿を消したと予想していた。

 根上さんのことを検索した履歴が、兄貴のパソコンに残っていたからだ。

 以前から、僕は根上さんのことを家族に話していた。

 あの人が政治家として活動できるようになれば必ず世の中は変わる、機会あるごとにそう力説していたが、彼のあまりにも並外れた行動を家族はもちろん理解できず、そのうちに根上さんの話をすることはタブーとなった。

 僕はタブーというものがあまり好きではない。

 聞きたくない話に耳を貸さないのは理解できるが、世の中のことを思う気持ちまで否定されては、本当のコミュニケーションなどとれなくなってしまう。

 実は、警察が僕を黙秘と決め付けたことをあえて放っておいたのは、そこにも理由があった。

 本当に知ってほしいことを話すことができないのなら、一緒にいられないことはもちろん、消息が途絶えることすらあってもしょうがないのではないか。

 そのことを(僕はそう考えるタイプの人間だということを)家族にはわかってほしかった。 



 根上さんとの衝撃的な再会から帰ってきた僕に、母親はとてもやさしかった。

 事件のことには触れずに、無事に戻ってきた息子をただいたわってくれた。

 母親の優しさには感謝だったが、根上さんのことについては、何か釈然としない思いが続いていた。

 僕の家族は、間違いなく根上さんが僕をトラブルに巻き込んだと思い込んでいる。

 しかしその引き金を引いたのは僕だ。自分から連絡をとっておいて、しかもその結果彼に多大な迷惑をかけてしまった。

 車の修理代だって何十万とかかるはずだ。

 事件の後少しして、母親と兄貴は気晴らしにか僕を旅行に連れて行ってくれた。

 その旅行先で、僕は考えに考えたあげく母親に言った。

 「もう一度根上さんのところに行く。」

 母親に、いきさつを全て説明した。

 そして、このままでは納得できない、もう一度会ってきちんとケリをつけてくる。そう伝えた。

 母親はとても困った様子だった。兄貴にも絶対行くなと止められた。

 それでも折れない僕に、母親はしばらく考えて、そして半ばあきらめたように言った。

 「あなたの好きなようにしなさい」

 その瞬間だ。携帯のベルが鳴った。根上さんからだった。

 電話に出るなり根上さんは言った。

 「で、いつ来るんだ?」

 あまりのタイミングの不気味さに、先日のぞっとする感覚がよみがえった。

 今、母親に言ったことなど忘れて、もう関わるのをやめたい衝動にかられたが、ケリをつけなければという気持ちの方が強かった。

 「..なるべく早く行きます。」

 そうして再度根上さんと会う約束をすることになった。

 ただ、行くと約束したものの、いざ行こうとすると相当ためらった。

 実家の居間でどうしようか迷っていると、根上さんから電話が入った。

 「のぶ、テレビ見てるか?」

 「見てないです。」

 「3チャンネルで面白い番組やってるから早くつけろ。」

 3チャンネル(教育テレビ)をつけると、「デジタル」についての講義を放送していた。

 少ししてまた根上さんから電話が入った。

 「のぶ、12チャンネルでマッドマックスやってるから見ろ。」

 「わかりました。」

 テレビを12チャンネルにつけ変えた。

 根上さんからまた電話が入った。

 「のぶ、3チャンネル見てるか?」

 「いえ、今はマッドマックス見てます。」

 「なんで両方見ないんだ!」

 「そんなこと言っても..」と顔を上げると、今見てるテレビの他に、向かいにもう一つテレビがあるのに気が付いた。

 気が付くと同時に電話は切れた。

 一瞬、監視カメラがあるような感じがした。

 会いに行くのをますます迷いそうになったが、母親にああ言った手前もう行かないわけにはいかない。

 勇気をふり絞って、根上さんに電話をした。

 「のぶです。これから行きます。」

 そうして、根上さん宅へ向かった。

(つづく)

by tenpapa2013 | 2015-11-09 17:57 | 根上 隆 | Comments(0)