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根上さんとのセッション その8

《第三部》

 根上さんと別れた翌日、ディズニーランドに行ったときの話をしようと思う。

 ディズニーランドは、みんなも知ってる通りビジターへの気遣いには目を見張るものがある。

 母親と親戚のおばさんの、言わばお年寄り二人を連れて行った僕だったが、全く何のストレスもなかった。(シーの方は、できたばかりの時だったので、若干スムースさに欠けるところもあったが、それでも申し分ない。まさに日本一のヒーリングプレイスだ。)

 ただ今までの僕とは何かが違っていた。それまでの僕なら、ただ楽しんで終わりだったはずが、常に「もっとよくなってもらうにはどうすれば良いか」という視点がなぜかつきまとうのだ。

 決定的だったのは、おばさんの宿泊先のミラコスタへ行ったときだ。

 おばさんの部屋は、エレベーターを降りてから割りと離れたところにあった。

 休日前の混雑時ならまだしも、平日であれば、予約の段階で年齢を聞いて高齢者がいる宿泊客にはエレベーター近くの部屋を用意してあげるという気遣いがあってもいいだろう。(何しろここはディズニーランドだ。)

 部屋で使うスリッパも、大人用と子供用があったが、大人用は明らかにおばさんの足には大きすぎた。大人用にも大小の二種類があってもいいと思う。

 根上さんのパワーは、相手を思うことから生まれる。

 それまでならただ黙っていたであろう僕も、根上さんとのセッション後ではそれを黙っていることなどできなかった。

 気づいたことを数点まとめて、帰りがけにホテルにそれらを伝えることにした。

 「ちょっとお話したいことがあるのですが..」

 ボーイを見つけてそれらの点を話し出すと、さすがディズニーランドだ。

 「恐れ入ります。まずお客様のお荷物を持たせていただけますか?」

 そう言って、僕の荷物を代わりに持ちながら、そして僕の言うこと一つ一つを真剣に聞き取った。

 「ご指摘本当にありがとうございます。必ず改善させていただきます。」

 「ほんと?じゃ、一年後見にくるよ?」

 「ぜひ、いらしてください!」

 そうして、とても良い気分でミラコスタを後にした。

 舞浜の駅に着くと、クレジットカードを申し込むと1000円分の商品券をプレゼントするというキャンペーンをやっていた。

 「これ、申し込むだけで1000円分の商品券くれるの?」

 「はい、差し上げてます。」

 「じゃあ、申し込まない理由ないよね。」

 そう言って、カードの申し込み書に記入し、1000円分の商品券を受け取った。

 その商品券は、舞浜駅内のショッピングセンター用の商品券だった。

 「なんか買うものないかなぁ..」

 そう思って振り返った先に、〈母の日フェア〉サマーセーター1000円!という広告が目に飛び込んだ。

 「そうか、来週は母の日か..」

 手元には1000円分の商品券がある。じゃあ、これでプレゼントを買おう。

 そうしてサマーセーターを一着買って、帰りがけに実家のテーブルの上に置いておいた。

 翌日、ディズニーランドから戻った母親から電話が入った。

 「(申し訳なさそうに)...プレゼントありがとね。あれ、高かったんでしょう?」

 他にもいろんな話があるのだが、ここでは割愛する。

 ただ何しろ、根上さんのエネルギーはやることなすことを全てを面白くさせるのだ。

 ディズニーランドから戻ってすぐ根上さんに電話をした。

 「根上さん、いろんなことありましたよ。根上さんのおかげで面白いことばかりですよ。」

 と、根上さんと別れた後あったことをざっくばらんに説明した。

 「そうか。俺もな、今日池袋の東口で上半身裸でカッターナイフ振り回しちゃったよ。そのあと中村敦夫(議員)の秘書に土下座させちゃったよ。」

 やはりケタが違う。

 その根上さんと急に連絡がとれなくなった。

 どうしたんだろうと思い、根上さんの面倒を見てるSさんと話をしたら、

 「そうなのよーまたいなくなっちゃって。またどっかに捕まってんじゃないの?」

 Sさんはこう続けた。

 「区長の立候補の届けだけはやっとけって言うんだけど、でもあれだって100万かかんのよ。どうせ受かんないんだし、帰ってくるかもわかんないのに100万はねぇ..ま、しょうがないんだけど、でも正直痛いわよ(笑)」

 根上さんが、100万円を捨ててまで立候補しようとするのは、真実から絶対に逃げない人間が区長になったときの覚悟をみなに知らしめるためだ。(根上さんは、田中康夫は知事室をガラス張りにしたが、俺が区長になったら区長机を正面玄関前に置くと言っていた。そこから役所機構を全て変革するつもりらしい。)

 根上さんは、先の参議院選挙では数十票しかとれなかった。

 しかし、今なら2000票はとれると真面目な顔で話していた。

 中野区長の当選ラインは2万票だ。どう頑張っても当選の目はないが、当選せずに本当の「政治」を知らしめる方法はないものだろうか。

 Sさんの話を聞いた僕に一つの考えがひらめいた。

 もし、せめて役所の人たちに、根上さんが区長になることの危機感を伝えることができたなら、立候補しなくても、つまり100万円つかわなくても多少はその目的を達することができるのではないか。

 そう考えた僕は、さっそく中野区役所へ向かった。

(つづく)
by tenpapa2013 | 2015-11-09 18:04 | 根上 隆 | Comments(0)